「ふうかちゃん、おおきくなったら おとうさんと けっこんするの」
長女がそう言い出したのは、1年くらい前だったか。
「おとうさんは、おかあさんと結婚しているから、風花ちゃんとは結婚できないんだよ」
「いやだぁ。おとうさんと けっこんしたいんだもん」
「ダメー。おかあさんが結婚してるんだもんっ」
「うぇ~ん。おかあさんの いじわるぅ」
そんなやりとりを、夫は鼻の下を伸ばしてニヤニヤ聞いていたものだ(彼の人生で一番モテている瞬間に違いない!)。
「誰かと結婚しているひとは、他のひとと結婚できないんだよ」「お父さんと子どもは結婚できないんだよ」何度説明しても、何故か彼女は度々この話題を持ち出し、最終的にはべそをかいて夫に抱きつき、「よしよし、大きくなったら結婚しような」と慰めてもらう、ということを繰り返していた。
結婚ってもんをわかっていなくて何度も口にしているのか、一連のやりとりそのものを楽しんでいるのか、ギモンなんだけど。
ところが最近。
「あたし(テレビアニメの影響か、一人称が“あたし”になってきた)、こうたくんと けっこんするの」
と言うようになってきた。
コウタくんは、保育園で同じクラスの男の子。色白で丹精な顔立ちをしている。私としては、タクマくんのほうがハンサム・ボーイでお気に入りなのだが…んなこたぁどーでもいいのだが、なかなかジェントルマンである。
何をもってして4歳児に対してジェントルマンなどというのかというと、以前、帰り道(園舎を出てから駐車場まで、少々距離がある)で長女がぐずって歩こうとしなかったとき、丁度通りがかったコウタ君が「ふうかちゃん、いこうよ」と手を差し出したのだった。その様子が如何にも紳士的で、「おぉ!」とカンドーしてしまった。なので、彼には“ジェントルマン”というイメージを持っているのである。
大分前のハナシなので、それがきっかけで好きになった、というわけでもないのだろうが、どうやらここ数週間で、そーゆー約束を交わしたらしい。約束ってアンタ(笑)。
「こうたくんも、ふうかちゃんのこと すきなんだって」
ええのぅ幼児は。男の子のほうからそんなこと積極的に言ってくれるなんて、小学校に上がる前までだぞ。
私も、初恋は幼稚園のとき近所に住んでいたマコトくんだったなぁ。小学校入学前に一家で引っ越して行ってしまって、それっきりだったけれど。きっと、今逢ってもお互いに全然わからないだろう。コウタくんも、ウチとは学区が違うから、おそらく卒園したらそれっきりになってしまうんだろうな。
まぁ、そんなものよね。
先のことなんかまるでわからない長女は、「大きくなったら、誰と結婚するの?」と聞かれるたびに
「こうたくん!」と、嬉しそうに答えるのであった。
…でも、先日、帰り道でポケモンカードをくれた、ハジメくんも気になっているらしい。
1年後には、誰と結婚するつもりになっているだろう?