風呂から上がって寝室に戻ると、次女は夫に抱かれており、長女はその傍に座り込み、目を赤くして鼻をすすっていた。
「あら、泣いちゃった?」
休日は、夫が娘たちを風呂に入れる。その後、次女に乳をやってから私がひとりで入るのだが、今日は寒かったので、浴室が冷える前に済ませたかった。なので、授乳せずに入ったら、案の定、乳をよこせと泣いてしまったらしいのだ。(←ひでぇ。)
けれど、長女がベソをかいている訳はわからない。
「ふうちゃんは、どうしたの?」
「あのな、ふうかちゃんが ゆびおいしくないよって ひっぱったのに、ほなみちゃん ゆび たべてんねん。とれへんねん」
……えーと。
幼児との会話は難しい。
しかしハハオヤのプライド(笑)にかけて、わからへんじゃ済まされない。
「イヤ、僕が、穂波に指吸わしたってん」
夫のフォローが入って、合点した。
長女のときもなのだが、夫は、赤ちゃんが泣くと、あやすため(誤魔化すため?『サザエさん』でカツオが似たような場面――鍋蓋のツマミを温めて赤ちゃんにしゃぶらせる――があったなぁ。知ってるひといるかなぁ)に自分の指の第二関節をしゃぶらせることがよくある。長女のときは、私が消毒に気を使ってるのになんてことすんだよ、と憤ったものだが、今ではヘーキ。第2子って、そんなもん。
で、私の入浴中に次女が泣いたので、夫が指の関節をしゃぶらせたら、長女がそれを止めようとした。しかし次女は、しっかり指を咥えていて、長女が夫の手を引っ張ってもはずせなかった。せっかく教えてあげたのに、妹が言うことを聞かないのがもどかしくて腹立たしく、悲しくなってしまったらしいのだ。
「そうかぁ、おとうさんの指はおいしないか」
笑って(ゴメン)なぐさめると、長女は立ち上がって叫んだ。
「そうやで! ふうかちゃん、しってんねんで!
おとうさんの ゆびは おいしないねん!
ふうかちゃんが あかちゃんのときから しってんねん!」