幼児と乳児、ふたりの子どもの世話をしていると、時間が経つのがとても早い。朝起きる。夫と長女を送り出した後、朝食の後片付けやら洗濯やら掃除やらしていると、あっという間に昼。まだ顔も洗っていない。さらにバタバタしていると、あっという間に夕方、長女を保育園に迎えに行く時間。帰ってきたら夜。気がついたら朝。バタバタの合間に、次女の授乳、オムツ替え、抱いてあやして、等々が不規則に入るのだ。
コンピュータを立ち上げている時間も、なかなかとれない。ブログに文章を書き散らしたり、好きなドラマのファンサイトに行ってBBSを覗いたりするのが、今の私の数少ないストレス解消なのに、それができないとなると…、まぁ、いろいろ、鬱積が溜まっちゃったりするわけですわ。
かといって、一日中苛々しているわけではない。躁鬱というほどでもないが、のんびりしているときと不機嫌なときの差が激しい。
不機嫌になるのは、長女がきっかけになることが多い。言うことを聞かなかったりダダをこねられると、ぷちんとどこかが切れてしまうのだ。叱るほどでもない小さなことで、ガミガミと怒鳴ってしまうことがある。
後から猛省。
しょんぼりしている長女を抱きしめ、「怒ってごめんね」と謝る。「おかあさん、いきなり怒っちゃってごめんね。ふうちゃんのこと、こんなふうに叱っちゃいけなかったね」
やっちまってから謝ってもなぁ。
ごめんで済むならケーサツいらんよなぁ。
なのに長女は、そんなとき決まってこう言ってくれるのだ。
「いいんだよ。おかあさんは、わるい おかあさんじゃないよ。ふうかちゃんこそ、おかあさんの いったこと さっさとしなくて ごめんなさい」
多分に『アンパンマン』の影響を受けている、いささか芝居がかった口調でなぐさめてくれる長女が、不憫でならない。
木製の、振るとカチカチと音がするおもちゃ。
長女が赤ちゃんのとき、義弟夫婦がくれたものだ。
おもちゃ箱の底で埃にまみれていたものを、引っ張り出して洗っておいた。生後1ヶ月を過ぎたばかりの次女は、まだこういうものには反応しないのだが、握るかなと思って持たせてみたら、案の定一旦は握ったものの、すぐに離してしまった。
そのまま、赤ちゃんをベビーベッドに寝かせておいて、私は家事を続けた。
しばらくしてベッドに戻ると、おもちゃの横に何か置いてある。
なんじゃこりゃ? と思った瞬間、部屋で遊んでいた長女に向かって、
「なに、悪戯してんのよ!」
と叱りつけていた。
まだ自分の行動をうまく説明できない彼女の悲しそうな顔を見て、はっとした。
写真ではわかりにくいが、古いおしゃぶりとそのキャップ。長女が赤ちゃんのときに使っていたものだ。おしゃぶりとしてはあまり使わなかったが、キャップや乳首の横のプラスチックの部分を齧るのが好きで、2歳頃までよく遊んでいたのだ。
ぐずりだした赤ちゃんをなぐさめるために、私の真似をして置いたものに違いない。
…また、やっちまった。
長女の前にひざまずき、頭を撫でる。「ごめんね。ふうちゃんは、穂波におもちゃをあげてくれたんだね」と言うと、彼女はぽろりと涙をこぼした。
可哀想な長女。
以前、まだ子どもが生まれる前、どこかのBBSに「自分は下の子ばかり可愛がって、上の子には辛く当たってしまう。上の子が可愛いと思えない」という女性の書き込みがあって、それでも人間か、母親失格だろうと思ったものだが(書き込みはしなかったけれど)、今の私は同じことをやっている。
佐々木先生の本で学んだことが、ちっとも生かされていない。
……どっぷり。