珍しく、少し早めに保育園へ娘を迎えに行った。
以前にも書いたけれど、天気が良い日の夕方は、クラスごとに園児たちは園庭に出て遊びながら、それぞれ保護者の迎えを待つことになっている。
園門を入って園庭を眺めると、見知ったクラスの園児や担任保育士の姿がなかったので、園舎に入ってクラスの保育室に向かった。
保育室に入ると、子どもたちはそれぞれ荷物を持って(迎えが来たときすぐに帰れるように、園庭に出る前に荷物をまとめて玄関ホールの隅に置いておく)、今まさに部屋を出んとしているところだった。
「ふうかちゃん、おかあさん きたよ」
クラスの園児のひとりが私の姿をみつけ、娘に声をかけた。
呼ばれて振り向いた娘は、いきなり大声で泣き出した。
…ちっ。
「風花ちゃん、どうしたの?」
うろたえる担任保育士。
いいえ、わかってます、私には。
つまり、園庭で遊びたいのだ。
これから遊ぶ気マンマンだったのに、――きっと、まずすべり台、それからブランコと、計画を立てていたのだろう――おかあさんが迎えに来たから遊べなくなって、それが悲しくて泣いているのだ。
外遊びが大好きだってのは、いいことなんだけどね。
でも、駐車場から園門を通ってここまで、ナッちゃんとかユウくんとかマーちゃんとか、何組もクラスの園児親子とすれ違ったけれど、誰もぐずってなんかいない、ケロッとして楽しげに帰って行くのだ。
おかあさんが迎えに来るのを泣いて嫌がるなんて、娘だけとちゃうか。
哀しいぞ、あたしゃ。
涙を頬に散らしながら、もみじのお手々をげんこつにして私の腰の辺りを叩く。
オヤを殴るな、馬鹿者。
しょーがねぇ。
「ちょっとだけだで? 10分経ったら帰るからな」
そう言うと、しゃくりあげながらも、いつもの荷物置き場にカバンを放り出して、お友だちと一緒に玄関に向かう。
2分後、荷物を持って娘に追いついたときには、もう大はしゃぎでブランコに乗っていた。
ああ、もう、かわいいったらありゃしない。
クルマに乗り込んだのは、それから30分後だった。